<クローズアップ>

NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML

患者中心の開かれた医療の実現を目指して、患者と医療者のより良いコミュニケーションづくりに取り組み、また、医療におけるさまざまな問題点について社会への具体的な提案を行っているNPO法人 ささえあい医療人権センター COML※1。模擬患者(SP※2)グループの活動にもいち早く取り組み、医学教育に参画するなど、先進的なヘルスケア関連団体として医療者や行政にも注目されている存在です。「賢い患者になりましょう」を合い言葉に、患者の主体的な医療への参加を呼びかけるCOMLの活動について、理事長の山口育子さんに語っていただきました。

※1 COML:Consumer Organization for Medicine & Law
※2 SP:Simulated Patient

活動の状況

「賢い患者になりましょう」を合い言葉に患者の主体的な医療への参加を目指して設立

「NPO法人 ささえあい医療人権センター COML(以下、COML)」は、医療を消費者の視点でとらえ、患者が自立して主体的に医療に参加するよう、広く社会に呼びかけるための事業を行う市民グループとして誕生しました。「賢い患者になりましょう」を合い言葉に、患者と医療者のより良いコミュニケーションづくりや、患者中心の開かれた医療の実現を目指し活動しています。

活動の基盤となってきたのは「電話相談」です。今までに約5万5千件の相談を受け、寄せられた声から私たちも学んできました。そして、患者が不満や悩み、不信感を抱く原因の多くは医療者とのコミュニケーションギャップであることを痛感し、患者・医療者双方のコミュニケーション能力を高めるためのさまざまな活動を行ってきました。電話相談については、現在は研修を受けたボランティアスタッフが中心に対応しており、相談者の気持ちに寄り添いながら、相談者自身が答えを見つけるための問題整理のお手伝いをし、相談者が主体的に問題解決していけるような支援やアドバイス、情報提供を心がけています。

「模擬患者グループ」や「患者塾」「病院探検隊」など多彩な活動を展開

模擬患者グループの活動は、スタッフが症状をもった患者になりきって医学生・研修医・看護学生などと医療面接を行い、患者として気づいたことや感じたことを率直に相手役の医療者や学生に伝え、フィードバックを行う取り組みです。この経験を通じて、医療者に患者一人ひとりが生活背景をもった個別的な存在であることを理解してもらい、コミュニケーション能力を高めるトレーニングとして役立てたいと考えています。COMLは市民グループとして日本で初めて模擬患者の派遣を始め、医学部の医療面接試験(オスキー)にも参加しています。派遣する模擬患者は独自に養成したボランティアスタッフで、現在は他団体が模擬患者グループをつくる際の支援なども行っています。

そのほか、ロールプレイやディスカッションを通して学ぶ「患者と医療者のコミュニケーション講座」、医療の周辺事情を理解し、より深く医療とかかわる人材を育成する「医療で活躍するボランティア養成講座」、患者・家族・医療者の“対話・気づき合い・歩み寄る”関係づくりを目指すミニセミナー「患者塾」なども行っています。依頼を受けた病院に出向き、患者の視点から見学・受診をする「病院探検隊」では、感じたことや改善点の提案を病院側に伝え、患者の声を活かした病院の改善に役立ててもらっています。

また、厚生労働省の研究班の一員として、インフォームド・コンセントを普及するために1998年から『新 医者にかかる10箇条』を発行しています。さらに、子どもにも自分の健康を守る意識をもってほしいとの願いから2014年には『いのちとからだの10か条』を発行しました。2014年の高血圧治療ガイドライン改訂時には、日本高血圧学会の依頼で患者向けの解説冊子『高血圧の話』を作成するなど、印刷媒体やメディアを通しての発信にも力を入れています。

講演や、医療機関や行政の検討会・会議にも参加するなど活動の幅が広がる

私は1990年に卵巣がんを発症し、医療と深くかかわるようになりました。まだ本人へのがん告知も一般的ではなく、自分のことを知るだけでも努力が必要な時代で、医療現場におけるコミュニケーションの必要性を痛感していた時、COMLを知って活動に参加し、事務局スタッフとなりました。

90年代以降、市民の権利意識が向上し、情報化が進み、医療環境も目覚ましく変化しました。本人への告知も一般的になり、インフォームド・コンセントも周知され、検査や治療を受ける前に合併症や副作用も伝えることが当たり前になったのです。一方で、薬害エイズ事件や患者取り違え事件が起こり、医療への不信感が高まりましたが、その後、医師不足や医療過疎、医療費の問題などが注目され、医療に対する社会の関心も高まってきました。

こうした中で、COMLには厚生労働省や行政・医療機関からの検討会や会議への参加依頼が増えてきました。2011年に創始者の辻本好子理事長が亡くなったため、私が理事長を引き継ぎました。厚生労働省や大学病院などの各種会議に参加することが、講演などと併せておもな私の役割になっています。会議では当初、患者代表の参加そのものが重視されている印象がありましたが、次第に積極的に意見を求められ、意見や提案が形になることも増えてきました。最近では、厚生労働省以外にも慶應義塾大学病院「病院長特命タスクフォース(病院機能改革)」のメンバーや、医療事故調査・支援センターの運営委員・再発防止委員なども務めています。私も電話相談を2万件以上受けてきましたので、その中で“染みついた”多くの患者さんの思いや願いを、より良い医療の構築に役立てたいと考えて活動に取り組んでいます。

行政や医療機関の要請に応えられる人材の育成へ

COMLが活動を始めて25年。開かれた医療、患者と医療者のコミュニケーションについて、患者側でも医療側でも意識は高まってきましたが、まだ十分ではないというのが私たちの思いです。たとえば、インフォームド・コンセントは当然となり、ほとんどの医療者が患者への説明を行っていますが、患者側は十分に理解していないことが多いのが実情です。医療者の一方的な説明ではなく、患者が本当に理解し情報の共有をしたうえで納得して検査や治療を受ける、真のインフォームド・コンセントを広める必要があります。そこで医療者や行政が、患者とともに考えていこうという機運を逃さないように他の団体とも連携しながら、医療や行政の場で活躍できる人材育成にも今後力を入れていきたいと思っています。

高齢化が進み、医療にかかわる人が増えていく社会において、医療をよく知った賢い患者を増やすことは必須です。そして、医療現場や、医療を含めた地域行政にもますます患者や市民の参加が求められると思います。そのためには、電話相談などを通じてCOMLに集まる声を反映した活動を、安定して続けられるように、財政面や人材面などの組織力も整備していくことも必要です。そして、医療の知識をもって冷静に行動できる人、成熟した患者を各地で増やし、より良い医療の実現に向けて活動していきたいと思います。

組織の概要

■NPO法人 ささえあい医療人権センター COML(コムル)(認定NPO法人申請中)
■発足 1990年9月
■法人設立 2002年4月
■会員数 約1000人

主な活動

■電話相談
■会報誌の発行 
■ミニセミナー「患者塾」
■模擬患者グループ
■病院探検隊
■患者と医療者のコミュニケーション講座
■医療で活躍するボランティア養成講座
■患者対応セミナー(医療者向け)
■書籍等の発行
■講演・原稿執筆
■検討会や各種会議への出席