<知恵の泉>

HOW TO/第8回
会の運営に役立つハウツー集 信頼性を高め、ネットワークを広げる MSキャビンの「事業報告書」および「相談業務」

NPO法人MSキャビン 理事長 中田郷子

MSキャビンは、MS(Multiple Sclerosis多発性硬化症)の患者さんに対して、情報を提供することにより、病気を受け入れ、病気とうまくつき合っていけるようにサポートする活動を行っている団体です。今回は、MSキャビンが、団体としての信頼性を高め、また読者や支援者を拡大していくために工夫している事業報告書や相談対応について、その具体的な取り組みをご紹介します。

めざすのは、団体の「顔」や努力が見える事業報告書

私は、事業報告書の目的は、MSキャビンを知らない人でも、報告書を読めば、実際の活動内容が把握できること、読んだ人が私たちのことを理解し、応援してくれることだと考えています。

MSキャビンの設立当初は会計報告だけを作成していましたが、活動報告もきちんとするべきだという記事を読んで共感し、2001年から現在のような詳しい事業報告書を作り始めました。資金として寄付をいただくわけですから、会計報告はもちろん、活動も細かく報告する義務があると思うのです。

今年は3000部作りましたが、全体の文章とレイアウトは自分たちで作成し、印刷と製本は業者に依頼しました。活動報告のページも会計報告のページも、読みやすくわかりやすいものになるように毎年工夫しています。「何でもできるだけクリアに細かく報告しよう」「事務局の業務や、団体の顔が見える報告書にしよう」と考え、日常の活動でも常に報告書のために細かく記録を残すように心がけています。

読者拡大や寄付依頼にも、事業報告書を活用

事業報告書には協力医師の一覧を掲載しているので、専門医を紹介してほしいという依頼があれば、事業報告書を送るようにしています。MSキャビンは、会員ではなく、情報誌の定期購読者というスタイルをとっていますので、問い合わせがあれば、まず事業報告書と情報誌を送って、必要ならば「定期購読してください」と呼びかけるようにしています。事業報告書はMSキャビンの活動をすべて掲載しているので、電話相談の際などにスタッフの資料としても役立っています。賛助会員にも、この報告書を送り、寄付の継続をお願いします。事業報告書の作成と送付にはそれなりのコストがかかりますが、きちんとした報告書があれば、団体としての信頼性が高まり、読者や支援者が増えることを実感しているので、これは一種の投資だと考えています。

現在は、来年度の事業報告書に備えて、情報誌の原稿制作や電話およびメール相談の対応などさまざまな事務局業務に、どのくらい時間がかかっているかを測っています。メールの対応に1日何時間ぐらいかかるから、何人ぐらいスタッフがいると助かるというように報告していけば、もう少し人が集まりやすくなるのではないかと考えているのです。お金がない、人がないというのはどこの団体でも共通の課題だと思いますが、こうした詳しい報告書を作っていると、どこが不足しているのかということが読んでくれる人にもよくわかり、効果もあると思います。

MSキャビンの 事業報告書のポイント

ホームページ運営、情報誌、セミナー・講演会、ミーティング
●写真などを活用して、活動内容が読み手に見えてくるように工夫する。
●講演会やセミナーの報告は、具体的な場所や開催時期などを細かく載せて、どこで、いつ、開催されたか、ひとめで把握できるようにする。
●応援しよう、という気持になってもらうために、報告と共に、今後の取り組みや計画、抱負なども載せておく。

■会計報告
収支計算書、損益計算書と貸借対照表
●会議費や通信費の中身もよくわかるようにできるだけ詳しく書く。

■運営体制と事務局業務の紹介
●できるだけ詳しく説明する。相談対応についても、事務局で多数の相談に答えていることを理解してもらうために、具体的な数や内容を載せる。

■賛助会員の紹介
●寄付など支援してくれた団体の許可を得て紹介する。

■患者さんの声
●患者さん(読者)の投稿を、承諾を得て掲載し、親近感を高める。

■協力医師の紹介一覧
●MSの専門医は数少ないので、協力してくれた医師を一覧表で紹介。電話での問い合わせに答えやすいように地域別に表を作成。

団体の信頼性を高める 相談業務のノウハウ

電話やメールでの相談業務は、ヘルスケア関連団体の事務局の主な活動のひとつです。電話相談のとき、担当者が不在でもきちんと対応できたり、どのスタッフが電話を受けても団体として統一された応対やアドバイスができるようにしておくことは、団体の信頼性を高めるためにとても重要です。その一方で、スタッフ個人の負担が重くなりすぎないように配慮することも必要だと思います。 そこで、MSキャビンでは、電話での受け答えのマニュアルを作ったり、パソコンや通信システムの便利な機能を活用するなどして、相談にもきちんと対応できる組織をめざしています。

■相談業務のポイント
●電話やメールは、その都度チェックして、相談者のデータベースを作っておき、次回からの相談に活用する。
●団体としての電話相談の対応マニュアルを作成。たとえばつらいという訴えには、まず共感して、コミュニケーションを深めるように心がけるなど。
●電話相談は、担当者が不在のときは転送して、相談時間内は常時対応できるようにする。(NTTのボイスワープを利用。)
●携帯メールは逐一答えているとチャットのようになることがあるので、緊急以外は1日1通しか返信しない。