<クローズアップ>

CAPS患者・家族の会

内部交流担当 戸根川 理登 氏

乳幼児期に発症し、生涯にわたり発熱や激しい炎症を繰り返す。国内患者数は約50名という非常に希少な難治性の自己炎症性疾患「クリオピリン関連周期性発熱症候群(以下、CAPS)」。「CAPS患者・家族の会」は、この病気の子どもを持つ親たちが治療薬の承認を求めて結成した患者団体です。2011年に治療薬が承認されてからは、難病指定や医療費助成を求める働きかけや、患者家族の交流や支え合いなど地道な活動を行っています。今回のクローズアップでは、団体代表を務める夫とともに団体の中心的な存在として活動に取り組む戸根川理登さんに、希少難病の患者団体の活動や今後に向けての課題についてお話を伺いました。

活動の状況

乳幼児期から生涯にわたり全身に炎症を繰り返す超希少難病

幼少期に発症し、激しい炎症や発熱が続くCAPSは、100万人に1人が発症するとされ、希少疾患の中でも特に患者数が少ない「ウルトラオーファン(超希少難病)」と呼ばれる病気です。 生まれつき備わっている防御システム調節に関与する遺伝子の異常などから全身にさまざまな炎症を繰り返すと考えられていますが、そのメカニズムは十分には解明されていません。近年、遺伝子レベルでの研究が進み、診断ができるようになりましたが、いまだに治療法は確立されていません。欧米では炎症による症状を抑えるために、炎症性サイトカインの働きを標的にした生物学的製剤「アナキンラ」「リロナセプト」「カナキヌマブ」が開発され、使用されています。日本ではアナキンラが厚生労働省が定める手続きに基づき個人輸入で使用されてきましたが、2011年にカナキヌマブが国内での承認を受け、高額療養費制度が使えるようになりました。しかし、1〜2ヶ月に1度必要になるこの注射薬は希少性が高く、1本約130万円もするので、保険による3割負担と高額療養費制度が適用されても家計への負担が重く、投薬を諦める患者家族もいるのが現状です。

我が家の場合、3人目の子どもである次女が、1歳の時に突然、高熱と全身の発疹を発症し、原因不明のまま入院や検査を繰り返しました。幸い早くに専門医にめぐり会い、膝が腫れる特有の症状からCAPSと診断されて2歳8ヶ月で治療を開始したところ、劇的な効果が現れました。それまでつかまり立ちもできなかったのが、アナキンラの投与3日目につかまり立ちを始め、1ヶ月で歩き始めたのです。当時は、アナキンラを個人輸入する形で一部の大学病院でのみ治療が行われており、治療が受けられない患者も少なくありませんでした。そのような状況の中で患者家族が連絡を取り合うようになり、やっと同じ病気の患者に出会えた喜びと同時に、治療が受けられない患者がいるという不公平さを感じたことから、すべての患者が薬を使えるようにしたいという思いで「CAPS患者・家族の会」を立ち上げました。

特定疾患の指定を目指す働きかけや患者家族の交流などを行う

2009年にカナキヌマブの治験が始まり、当会の会員からは11家族が治験に参加しました。その後「医療上の必要性が高い薬剤」として申請から8ヶ月という異例の速さで2011年に承認され、保険適用も決まり、患者や家族を救うための大きな一歩となったのです。毎日痛い注射を打たなければならないアナキンラに比べて、カナキヌマブは原則として8週に1度の投与で良く、注射の痛みや生活時間の制限からも開放されました。

しかし、生物学的製剤は非常に高額であることから、私たちは将来にわたって安心して治療を受けることができるように、「特定疾患治療研究事業」の対象疾患に認定されるよう厚生労働省に要望しています。また、CAPSに対する詳細なメカニズムの解明や有効な薬の開発、さらには根治療法につながるような研究が継続して進められるよう、研究の推奨やその体制の整備を行うために「難治性疾患克服研究事業」の対象疾患に認定されることが必要とも訴えています。iPS細胞の研究も始まっていますので、体制を充実して研究を進めてほしいと期待しています。また、薬の効果が高いからこそ、薬が使えなくなった場合の不安感は大きいため、カナキヌマブ1種類だけでなく他の薬も認可してほしいと考えています。患者家族に対しての活動としては、関連情報の提供とともに、親睦を深めて相談や不安を受け止める場として、関東と関西で交流会を開催しています。希少疾患のため、同じ病気の患者家族の存在は貴重であり、ともに支え合いたいという気持ちが強く、とても重篤な病気であるにもかかわらず団体の雰囲気は意外なほどなごやかで、仲が良いのが特徴だと思います。

特別な活動をしなくても 必要な治療と支援が 受けられる社会へ

私たちは、同じ炎症性の疾患である若年性関節リウマチの「あすなろ会」との交流を通じてVHO-net に参加するようになり、患者団体の活動や運営のノウハウを学びました。また実際に薬が承認されるまでの活動を通じて、行政や報道機関に働きかけることや、病気を啓発するために自ら活動することの必要性を痛感しました。確定診断ができるようになり、CAPSと診断される患者数は増える傾向にあります。患者家族がホッとできる場であり、お互いに支え合うという団体の良いところは大切にしながら、今後はもっと社会に向けて情報発信を行い、潜在患者の早期診断・治療につなげ、難病や子どもの病気にかかわる団体との情報交換やネットワークづくりにも取り組みたいと考えています。また将来的には、親だけでなく、当事者である子ども自身が主体的に活動に取り組むことも必要だと考えています。

この病気には、とても大きな不公平が付きまとっています。難病の条件を満たしているのに特定疾患に指定されていませんし、アナキンラによる治療も、住む場所や診断がついた時期で受けられない人もいました。成人になるまで診断がつかず、重症になった例もあります。薬の効果や必要量など個人差が大きいのも特徴です。免疫不全症として助成が受けられる自治体と受けられない自治体があるという不公平も存在します。

患者数が極端に少ないため助成制度から取り残されてきた希少難病もカバーするという難病の新制度には期待していますが、限られた予算の中でどの程度の支援が実現するのか、決して楽観できないことも認識しています。病気の子どもを抱えて苦しんでいる親たちは患者と家族を支えることで精一杯で、声を上げたり活動したりする余裕がありません。誰でも希少難病にかかる可能性はあるのに、特別な活動をしなければ治療や支援が受けられないという状況では安心して暮らすことができません。CAPSのような希少難病も決して他人事ではないことを多くの人に知ってもらい、誰もが安心して暮らすことができる社会になるように活動を続けていきたいと思います。

クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)について
遺伝子の異常により炎症に関与する「インターロイキン(IL)-1β」という蛋白が過剰に作られるために起こる病気。通常は細菌やウイルスの侵入などに対し、体の防御システムの働きでインターロイキン(IL)-1βが放出され、発熱や炎症といった症状が現れますが、CAPSでは外敵の排除とは関係なく放出が続き、多様な炎症症状が引き起こされます。
CAPSにはCINCA症候群(重度)、Muckle-Wells症候群(中等度)、家族性寒冷蕁麻疹(軽度)という重度の異なる3つの疾患が含まれています。発熱や発疹、頭痛、関節痛などのほか、無菌性髄膜炎や視力障害、膝・足首などの関節の炎症や変形による腫れと激しい痛み、それに伴う歩行困難、進行性難聴など、さまざまな症状や障がいが確認されており、最悪の場合、幼くして命を落とすケースもあります。

組織の概要

■設 立 2008年
■会員数 21家族

主な活動

■マスメディアやインターネットを通じての情報発信
■難病指定、特定疾患認定を目指した厚生労働省などへの働きかけ
■患者家族の情報交換、親睦のための定例会や交流会の開催
■医療関係者、製薬企業、関係団体との連携