<Focus on>

患者を中心に、医療者など関係者が一堂に会し治療や生活の質の向上について多面的な研究発表を行う「日本パーキンソン病コングレス」

ヘルスケア関連団体の特色ある活動や、従来とは異なる新しい取り組みをご紹介するFocus on。今回は、患者を中心に医療者や福祉関係者が一堂に集まり、最新治療やQOL(生活の質)の改善など多くの患者に役立つ研究発表やディスカッションを行う「日本パーキンソン病コングレス」に注目し、開催にあたって事務局を務めた全国パーキンソン病友の会の高本久さんにお話を伺いました。

一般社団法人 全国パーキンソン病友の会
常務理事 高本 久 さん
まず「日本パーキンソン病コングレス」について教えてください

コングレスというのは会議、大会という意味で、日本パーキンソン病コングレス(以下、JPC※2)とは、患者や家族、専門医や研究者、看護師や理学療法士などパーキンソン病にかかわる人々が一堂に会し、情報交換や体験発表、研究発表を通じて問題を共有し、病気への理解を深め、患者のQOLの向上を目指す集まりです。患者と主治医の関係のあり方や、患者自身の工夫など病気にかかわることをすべて語れる場、患者同士あるいは医療関係者との連帯の場として、患者のQOL改善に役立ち、そしていずれはパーキンソン病の完治につなげることを目的としています。 6月24・25日に茨城県水戸市で開催された第1回JPCでは、治療法の研究開発促進、情報交換、豊かな療養生活の実現などを目的に、患者と医師がペアを組み同じテーマについて発表する講演や、フォーラムディスカッション、ポスターセッション、協賛企業の展示などを行いました。2日間の参加者は、当会の会員・家族346名、会員以外の患者・家族78名、医師22名、その他(看護師や作業療法士などの専門職、企業関係者など)83名で合計529名でした。

JPCが開催されるまでにどのような経緯や背景があったのですか

パーキンソン病についての世界的な動きとして、患者が運営にも参加する国際学会「世界パーキンソン病コングレス(以下、WPC※3)」が設立されました。3年に1度世界大会が開催されており、患者や医療関係者が密接に連携して行う斬新な取り組みとして高く評価されています。ただ、英語が公用語であることから、日本の患者にとっては少し敷居が高く、ほとんど参加できていませんでした。 一方、全国パーキンソン病友の会では、患者と医療関係者の連携を深める活動として、患者と医師が同じ目線で治療やリハビリテーションなどについて語り合う座談会を2013年から開催してきました。その企画会議の場で、日本でもWPCのように、患者やパーキンソン病治療にかかわる医療関係者や福祉関係者が一堂に会し、研究発表を行う場が必要ではないかという話になり、JPCの構想が生まれたのです。当会の中村博代表理事が会長となり、パーキンソン病のiPS細胞移植治療研究の第一人者である高橋良輔先生(京都大学教授)、若年性パーキンソン病の遺伝子を世界で初めて発見した服部信孝先生(順天堂大学教授)、パーキンソン病の治療薬を発見した村田美穂先生(国立精神・神経医療研究センター病院診療部長)に顧問として参加していただき、大会の開催に向けての活動を始めました。

開催にあたって配慮された点や成果についてお聞かせください

まず開催日時については、多くの患者が参加しやすいように、水戸市で開催されることが決まっていた当会の総会に合わせました。また、患者の経済的な負担を軽減するために、茨城県や水戸市、製薬企業や補装具の会社の支援を受けることとしました。 運営にあたっては、できるだけ患者を中心に進めることを心がけました。プログラムの中心は、患者と医師が同じテーマで語る発表です。多様なテーマで、できるだけ多くの方に発表していただくために、1組30分を基本としてコンパクトに話していただくようにしました。フォーラムディスカッションでは、当会が行ったウェブサイトでのアンケートを基に、患者や家族が困っていることなどを本音で語り合う場を設けました。 新しい治療法や新難病制度についての報告や、多くのポスターセッション参加もあり、また補装具のデモンストレーションも行われるなど、幅広い関係者の協力により充実した集まりになったと思います。患者からも「勉強になった」「来て良かった」という声がたくさん聞かれ、このような場が求められていたことが感じられました。JPCという組織で運営したことで、会員以外の患者や、医療関係者などが参加しやすかった点も良かったのではないかと考えています。

第1回JPC開催を経て今後の展望についてお聞かせください

パーキンソン病は各個人によって症状に多様性があり、多彩な解決法が必要となりますから、医師や研究者、リハビリテーションの関係者なども、多くの患者と接し、多様な症例を研究することが求められます。患者と医師が協力しなければできない分野をより発展させ、QOLの改善や在宅での療養環境の改善など、共通の目的を達成していくために、JPCのような取り組みが必要だと考えています。また、地方ではまだ病気を隠すことが多く、就労支援が遅れている地域もあり、こうした機会を通じてパーキンソン病についての理解を広めていくことにも意義があります。そして、患者にとっても、こうした活動に参加し知識を深めることは、自らの治療や療養生活に役立つとともに、前向きに毎日を過ごすこと、さらには生きがいにつながっていくのではないかと思います。患者と医師が協同・協力し行う作業は、未来への扉を開くことでもあります。 当会では、患者団体として、会員のためだけでなく社会資源としての役割を果たすべきだと考えており、若年性パーキンソン病のデータベースの作成や、患者と医師の座談会の開催などを行ってきました。JPCもその取り組みのひとつです。医師や医療関係者も積極的に協力してくださいますし、企業や行政にもこうした取り組みを支援していこうという機運があります。今回の成果や反省点を検討しながら、今後は2年に1度、学会や患者団体の活動に合わせてみなさんが参加しやすいように心がけながら、この有意義な活動を継続していきたいと考えています。

※1 DBS:Deep Brain Stimulation

※2 JPC:Japan Parkinson Congress

※3 WPC:World Parkinson Congress

一般社団法人 全国パーキンソン病友の会(JPDA)

パーキンソン病の患者・家族が設立、運営する患者団体。会員数約8500名。患者の療養生活の質の向上や、医療の研究体制の充実化、パーキンソン病の社会認知を高めることを目指し積極的な活動を行っている。