<知恵の泉>

HOW TO/第6回
会の運営に役立つハウツー集 災害支援 会員にすばやく情報を伝える、携帯電話メール配信サービス『じんじんネット』を構築

佐賀県腎臓病患者連絡協議会 会計書記 南川正一

10年前の阪神・淡路大震災、昨年の新潟中越地震、今年3月20日の福岡西方沖地震など、日本列島を次々と襲う地震。台風による風水災害も毎年のように発生しています。そんな災害時に疾患や障がいをかかえている人をどう支援していくかが緊急の課題となっています。佐賀県腎臓病患者連絡協議会(佐腎協)の南川正一さんたちは、携帯電話のメール機能に着目し緊急災害時の情報配信システム『じんじんネット』を構築しました。その経緯や今後の発展性について伺いました。

自分たちの身をいかに守るか、患者会ができることを模索

人工透析患者は週に3回は通院し、治療を受けなければなりません。地震などの緊急災害時にそれができなくなった場合、どう対処するか。病院に問い合わせても、患者への連絡体制もなければ病院間のネットワークもない、行政もどうしていいかわからない。阪神・淡路大震災や新潟中越地震を経験しながら何の手も打たれていないのが現状でした。自分たちの身をいかにして守るか、そのために患者会に何ができるかがこのプロジェクトのスタートでした。

特に佐賀県は地震の少ない県で防御への意識が低い。その反面、透析施設は佐賀市内に集中し郡部の方たちも市内に通ってくる。住んでいる地区に施設がない分、災害時には余計に状況がわからなくなり混乱を来します。一般の電話や携帯電話もつながりにくく、マスコミからの情報も特定団体に限って流すのは難しい。これまでの各地の災害状況を調べてみると、携帯電話のメール配信は、支障なく送受信できたことがわかり、緊急時の情報伝達手段に利便性が高いと判断しました。

福岡西方沖地震発生 メール配信の威力を発揮

私たちは特に情報通信の技術に詳しいわけではありません。ただ普段、携帯メールを利用しているなかで、たとえば書店やカラオケBOXなどの会員登録システムは、こちらからメールを送るだけで自動的にアドレスが登録され、その後は勝手に情報が送られてくる。大本のサーバーから無作為に、同時に、しかも大量に配信している。これを応用できないかと考えました。このシステムの強みは、パソコンがなくても事務局員が携帯からサーバーに直接、情報が送れることです。速さに価値のある情報ですから最適です。サーバーも県外に、設置しました。

県の災害対策事業の助成金を受け、昨年の8月から着手し、今年の1月にはシステムの環境が整い会員の募集を始めました。携帯電話会社と提携し、電話機は無償提供、先方も契約が増えるメリットがあります。身体障がい者は割引があり料金は半額になるので会員の負荷も少ない。お年寄りの患者も多いので、メールの見方、打ち方などの講習会を病院単位で携帯電話会社に開いてもらいました。

そんな中3月20日、福岡西方沖地震が発生したのです。佐賀県も震度6弱を感知。じんじんネットは第一報を地震発生の7分後に配信し、次々と情報を更新しながら約3時間半後にはほとんどの病院情報を会員に知らせることができました。とてもタイムリーに機能し、威力が実体験できたのです。これが新聞にも掲載され、行政を動かすことになりました。

行政や病院も組み込んだ、理想的なネットワークへ

私たちは当初から、じんじんネットは患者会から行政機関への投げかけと位置づけていました。理想としては佐腎協を介さず、行政↓患者、病院↓患者と直接、情報を流すほうがより速く効果的です。会員増加を目指す気持ちもありましたが、やはり非会員の方にも平等に情報が提供されるべきです。佐腎協からのこの提案を受け、行政は対策委員会を立ち上げました。患者の要望などを取り入れ病院側に「人工透析患者の危機管理の対応状況」という調査を開始しました。病院側も行政主体となると積極的に動きます。しかもシステムはすでにできあがっている。病院もそれを利用すればいいので初期コストは不要です。こうして患者、患者会、行政、病院が一体となったネットワークの構築がやっと始まったのです。

もちろん災害時だけでなくシステムを生かしていくことができます。病院同士の情報交換、病院、患者間では診察スケジュールの調整や送迎時間の通知などに利用できます。情報をバーコード化できるQRコード機能も付いています。写メールでQRコードを撮影するだけで情報が読み取れるので、カルテを持ち歩いているのと同じ。他の病院でもスムーズに治療が受けられます。これも雑誌などで店が宣伝に使っているのを見て、これやろうと。あったらいいな、こんなのあるぞ、使えないかな…。そんな患者ならでは知恵の集積がじんじんネットなのです。

じんじんネットが行政や病院と患者を直接結ぶ体制になると、佐腎協にとってのメリットはなくなってしまいます。でも患者自身の命を守れる、これが最大のメリット。これは企業論理では絶対に生まれない発想で、まさに患者会のやる仕事だと思います。