<患者講師File>

星 俊光 さん やどかり情報館(公益社団法人 やどかりの里)

統合失調症は、およそ100人に1人がかかるほど頻度の高い病気。幻覚や妄想が特徴的な症状で、それに伴い、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障がいを受けるが、心の働きの多くの部分は保たれ、多くの患者が回復する。まだ偏見や差別が多い中で、地域での生活や就労など社会復帰が課題。

精神看護を学ぶ学生などを対象に、自分の体験を語る

私は、「やどかりの里」の中にある「やどかり情報館」という精神障がいのある人が働く事業所で印刷の仕事をしています。以前、自分も訓練を受けていたことのある埼玉県立精神保健福祉センターのデイケアで、後輩の患者さんたちに発表した経験をきっかけに、講師としての活動を始めました。主に、やどかりの里で実習を行う看護学生を対象に、今までの道程や家族との関係、統合失調症という病気とどのように向き合いながら生活し、仕事に取り組んでいるかなどを話しています。

やどかりの里では、ほかの講師仲間とお互いに発表の練習をする場があり、感想を率直に言い合うことができるので、とても良いトレーニングになります。一度、引用やたとえ話を取り入れ、とても凝った構成の発表をしたら、とても不評で(笑)、「自然な方が良い」「体験から出た話だからこそ、相手の心に響く」とアドバイスされました。本を読むなどして得た知識ではなく、自分で体験して学んだ“智恵”を話すことが大切だと気づきました。

発表準備として原稿は作りますが、丸覚えはせず、発表時は必要に応じて原稿を見ながら、棒読みにならないように気をつけて話しています。「聞いてもらいたい」「聞いてくれてありがとう」という、いわば「おもてなし」の気持ちで話すこと、そして、学生さんたちを応援する気持ちを大切にしています。私は一生懸命になり過ぎる傾向があるので、テンションが高くなり過ぎないように、焦らないように、落ち着いて話すことも心がけています。

語る活動により、自分や家族を尊重できるように

私は、物事を深く考え過ぎるところがあり、家族や自分のことを責め続け、それが病気につながりました。講師として語る活動を始めてから、今までの自分の気持ちを客観的に整理することができるようになり、両親も必死に家庭を守ってきてくれたのだと理解できるようになりました。きょうだいのことも、見守る気持ちになれました。

講師の活動を含めて、やどかりの里では自分がありのままに受け入れられ、尊重されていると感じられ、私も自分や家族や、まわりの人を尊重できるようになりました。これは私の宝物です。ですから、私の話を一生懸命聞いてくれる学生さんのことも、頑張ってほしいと応援したくなるのです。講師として語る中で、自他尊重を学ぶことができたと感じています。

当事者に寄り添う職員の立場から

公益社団法人 やどかりの里 常務理事 増田 一世 さん

やどかりの里は、統合失調症などの精神障がい者の生活を支えたり、働く場を用意しています。1970年代から、精神障がいに対する誤解や偏見を改め、正しく理解してもらいたいと、当事者自らが体験や思いを語る活動を行ってきました。現在は、地域の人に呼びかけた体験発表会や、医療福祉系の学生を対象とした実習、講義などで体験を語っています。

講師として語る仲間が増え、お互いに学び合いながら伝える力をつけていくために、法人内で体験交流会も開き、語りを磨く取り組みも行っています。グループで対応するので、体調が悪くなってもだれかがピンチヒッターになれるメリットがありますね。

当事者の方が主体的に取り組めるように自主性を重視していますが、支援する側として、気持ちや体調の変化には十分に気をつけています。つらかった体験を話すことによって、その時の気持ちを思い出し、病気を想起させることもあるので、話したくないことは絶対に話さなくていいとアドバイスしています。当事者の声は何よりもインパクトがあり、伝える力がありますので、私たちもこの活動を大切にサポートしていきたいと考えています。

伝えるためのコツ

●自然体で、体験を伝える
●仲間うちで発表の練習を積む
●聞いてほしいという気持ちを大切にする
●体調が悪い時には代役が立てられるよう、グループで対応する