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山根 則子 さん 公益社団法人 日本オストミー協会横浜市支部 企画・渉外担当

医学生、看護学生などを対象に、また、教育機関にとどまらず学会や医療セミナーなどのさまざまな場で、患者やその家族が自らの体験を語る「患者講師」の活動が広がっています。これを受けてVHO-netでは、講演依頼があれば対応できる体制づくりを目指して活動しています。疾患や生活、社会環境や患者団体を通しての活動などを「生の声」で語る。そこには教科書や論文に載っていない切実な思いや、一人ひとりの生き方が息づいています。医療・福祉の現場、市民社会に種を蒔き、それが芽生え、大樹へと育っていく。そんな患者講師の活動を紹介していきます。

山根 則子 さん
公益社団法人 日本オストミー協会横浜市支部 企画・渉外担当
VHO-net 関東学習会運営委員 ワークショップ準備委員 オストメイトとは、病気やケガにより人工肛門・人工膀胱となった人のこと。腹壁にストーマ(排泄孔)を造設し、不随意に出る便や尿を受けるためのストーマ袋(装具)を貼って生活する。
患者講師としてオストメイトの実情や思いを話す

私は、1989年に直腸がんの手術を受けてオストメイト(人工肛門)になり、患者として必要な情報を求めて横浜市オストミー協会に入会し、支部役員や本部事務局なども経験しました。オストメイトとして最初に人前で話したのは約10年前。知り合いの保健師さんに依頼され、地域のケアマネジャー連絡会の勉強会でストーマケアやオストメイトが高齢になった時の問題点について話しました。

その後、ハート・プラスの会(内部障害者・内臓疾患の暮らしについて考えるNPO法人)の障害者週間のイベントで初めて自分の体験を語りました。その時に、同じ演者だった方に「聞く側は多様だから、夫婦と言うよりパートナーと言った方が良い」とアドバイスされ、言葉を慎重に選ぶ必要性を知りました。その後、千葉大学の医学生を対象とした生命倫理の授業などで、患者講師として講演や発表を行っています。

どう聞かれるかを想像しながら自分の言葉で話す

講演の前には、話す内容を構成して下書きを作り、時間を計りながら話す練習をします。当初は先輩が作った手引きなどを参考に資料や下書き原稿を作りましたが、次第に自分の言葉で話したいと考えるようになり、少しずつ自分の言葉に置き換えていきました。オストメイトの実際を話すのにも自分の感性に近い言葉を選び、また、難しい言葉や専門用語はできるだけ使わずに、誰にでもわかる言葉で伝えるように努めています。

話すことはあまり得意ではなく、聴講者の反応でその場でアレンジするといった機転も利かず、自信はないのですが、患者講師は“しゃべりのプロ”になる必要はないと考えています。また、私の体験はあくまでも私の体験であり、一人ひとり違うこと、すべてのオストメイトが同じでないことは理解してもらうように伝えます。アンケートを読むと、私が伝えたかったことが伝わっていないこともあるので、常に講演の依頼者が求めているものや、聞く側の受け取り方を想像しながら取り組むことを心がけています。

大切にしているのは伝えたい思いを強調し確実に伝えること

私は、オストメイトの困難さや大変さを訴えることより、「病気や障がいがあっても命の重さは同じ。あるがままの自分でいたい」という願いを伝えたいと考えています。病気が縁で素晴らしい出会いがあり、自分自身も成長できたこと、支え合う関係性が大切ということは、対象が誰であっても強調していきたいのです。

これからも機会があれば講演を引き受けたいと思いますが、私だけでなく、団体の若い人たちにも積極的に話してほしいと思っています。新しくオストメイトになった人へのピアサポートや、医療関係者や一般の方の理解を深めるためにオストメイトが語ることはとても重要だからです。そして、話すために体験をまとめることで、話し手は自分を客観的にとらえ、成長でき、結果的に患者団体としても力をつけられますので、患者講師を経験することの必要性を仲間たちにも伝えていきたいと考えています。

個人的には、特に未来ある子どもたちに私の思い「障がいがあろうとなかろうと命の重さは同じであること」を伝えていきたいので、子どもや障がい児の親御さんなどに向けて話したいと思っています。

伝えるためのコツ

●求められていることが何か、聞き手がどう感じるか、想像力を働かせる
●自分の言葉で、自分の体験、自分の感じたことを話す
●困難さや大変さより、希望を強調する