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関西学習会が取り組んできた『「患者・家族が語る」講演のポイント チェックリスト』が完成

VHO-net関西学習会は2004年の発足以来、「患者の声を医学教育に組み込む」をテーマに、医療関係者や学生などを対象とした講演に向けた模擬講演を学習会の大きな柱にし、取り組んできました。これまでの模擬講演は20回を超えます。その中で検討された事項を収集・整理・精査し、『「患者・家族が語る」講演のポイント チェックリスト』(以下、チェックリスト)が完成しました。

●猪井佳子 さん(NPO法人 日本マルファン協会)
●三宅好子 さん(あすなろ会)
●中井伴子 さん(日本ハンチントン病ネットワーク)
●浅野とも子 さん(NPO法人 ひょうごセルフヘルプ支援センター)
●神野啓子 さん(腎性尿崩症友の会)

チェックリストをまとめることになった きっかけについて教えてください

●神野 学習会で模擬講演をスタートした当初、すでに大学や学会などで実績を積んでいる人の講演をまず聞き、その後、毎回、患者団体から1名が時間と講演対象者を決めて発表するスタイルを構築していきました。その取り組みが10回を超した2011年の第21回学習会で、講演内容をより効果的に伝えるためのポイントをまとめてみようということになりました。
●三宅 全員でランダムにポイントを出し合うと、重複はありますが100項目くらい挙がりました。その次に、それをどのようなカテゴリーに分けていくかという作業に入りました。
●神野 2013年の第26回学習会で、講演で注意する項目をポイント集としてまとめ、評価基準とし、講演の精度を高めていこうということに決定しました。模擬講演で学びを継続してきて、その蓄積からポイント集を作ろうという思いが自然に発生した。そこに意義があると思います。
●中井 それから約3年かけて項目の見直し、文言のブラッシュアップなどを全員で検討していきました。毎回の内容を運営委員が整理して文章化し、次の学習会で検討するという作業の繰り返し。本当に完成するのかなという、停滞期もありましたね。

一連の作業の中でどのようなことが印象に残っていますか

●中井 2005年に学習会で初めて模擬講演をし、以来、大学の授業などで実際に講演する機会が増え、その経験もチェックリストに活かしたいと思いました。作ると決まってからは、模擬講演の見方、聞き方が変わりました。大前提として検討の視点がある。こうした方がより聞きやすい、伝わりやすいとチェックしながら見聞きします。そのような中から、「その場で思いついたことは話さない」「1回限りと思って話す」などといったさまざまな気づきがあり、それらを反映していきました。
●猪井 私は2009年の第13回学習会で模擬講演をしました。インターネットで講演のコツなどをやみくもに検索しながら原稿を作ったのですが、結局、疾患説明部分が長く、自分の体験は短くなり、そこに「泣き」が入ってしまって(笑)。自分では良くなかったと思ったのですが、感情を無理に抑えることはないと助言をもらいました。今回のチェックリストでは、みなで検討し「つらかった話も避けてはいけない」ということが盛り込まれました。
●神野 私も「泣き」の経験はありますね。2006年の第7回学習会で模擬講演を行った後、関西学習会のメンバーからの紹介で新潟県立看護大学で、初めて講師をすることになりました。依頼は子どもを亡くした時のことについて話してほしいというもので、原稿を作る段階で、真剣に自分の振り返りをしようと思った時に泣けてきて1行も書けなかった。どうにか講演にはこぎつけましたが、やはり泣いてしまいました。
つらかった思いを伝えることで感動してもらえるという経験をしましたが、私が強く思ったのは、自分の言葉で自分の体験を語ることの大切さでした。具体的なエピソードを入れ、それも医療系、福祉系と講演対象が変わると入れ替えをしたり。それらの経験がチェックリストに活かされていると思います。
●三宅 私の模擬講演は2012年の第23回学習会です。第21回の時からチェックリストの項目出しも進んでいたので、それを踏襲して原稿を作り講演しました。講演中は余裕がなく、効果などとても考えられないのですが「アイコンタクトをとる」とチェックリストにあったのでそうできた。チェックリストの項目はすべて思いつきで書いたものではない。素晴らしい先達がいて、学習会で講演を重ねてきた、そこから生まれたものですから。
●浅野 私は患者団体ではなく、セルフヘルプグループを支援する団体で、模擬講演はしたことがありません。2013年の第27回学習会からの参加で、すでに進行していたチェックリストも最初はどういう意味をもつのか曖昧模糊としていました。何度か参加し、地域運営委員にもなり、細やかな精査の作業を見ていると、とても意味あることで、そしてしんどい作業をされていると気づきました。模擬講演を聞く側としての気持ちも変わっていきました。

チェックリストが完成しVHO-net中央世話人会でも承認され全国の地域学習会でも参考・活用できるようになりました。
どのように使っていってほしいですか

●中井 チェックリストは、最終的に「依頼時」の確認事項と原稿や資料作成などの「準備」、「講演時」の3つに分類しました。一つひとつはさほど難しいことを書いているわけではありません。関西学習会では大学の授業や学会での講演技術を磨くことを目標に作りましたが、患者団体の紹介や地域学習会での発表などの原稿を書く段階でも参考になると思っています。
●猪井 私はチェックリストができてから2回、講演をしています。7分、25分と短い依頼でしたが、これがあることで軸がぶれずに、45分や90分用で作っていた当初の原稿から削ぎ落としていくことができ便利でした。
●三宅 2016年7月に開催された第36回学習会での模擬講演後の振り返りの際にこのチェックリストを使用しました。ところが講演後の質疑応答では、内容に感動したという感想が中心になる。そうではなく、常にチェックリストの項目に沿ってそれが出来ていたかどうかを評価する。そのような姿勢が根本になければこのチェックリストを作った意味がなくなります。それを進行役がきちんと理解していなければいけないと実感しました。
●神野 関西学習会としては、チェックリストの各項目に補足説明をつけようと考えています。同時に、関西学習会のメンバーは講演経験者も多いので、どのような内容の講演ができるか、その実績もふまえて患者講師情報リストの作成にも取り組んでいます。それらをVHO-netのホームページで公開してもらえる形に働きかけていけたらいいな、と話し合っています。関西学習会が培った財産を、より広く有効にヘルスケア関連団体、そして社会に発信できるようにしていきたいと願っています。