<まねきねこCircle>

北海道難病連と連携して障害年金無料相談会を実施
患者や障がい者の支援に取り組む社会保険労務士グループ「障害年金サポート社労士の会」

「障害年金サポート社労士の会」(北海道・札幌市)は、障害年金の情報提供や患者・障がい者の支援に取り組む社会保険労務士のグループです。2005年に結成以来、北海道難病連をはじめとする患者団体と協力し、障害年金無料相談会や講演会などを開催しています。社会保障制度が、制度を必要とする人たちに確実に活用されることを目指して、北海道・札幌で展開されている、ヘルスケア関連団体と社会保険労務士の連携についてご紹介します。

ヘルスケア関連団体の視点 複雑な制度の活用に必要な、社会保険労務士のプロの力

日本難病・疾病団体協議会(JPA)難病支援ネット北海道
代表 伊藤 たてお さん(北海道難病連 前代表理事)

「社労士の会」とのかかわり

北海道難病連では、1998年に「北海道・無年金障害者をなくす会」を発足し、難病患者の無年金問題に取り組んできました。2001年には、国民年金の任意加入の時代に加入せずに20歳を超えた学生が、交通事故などで障がいを負っても障害基礎年金を受け取れない「学生無年金問題」の集団訴訟にも加わりました。そのような運動の成果として制定された「特別障害給付金」について周知説明会を企画し、難病連の仲間でもあった社会保険労務士の加福さんに協力をお願いしたところから、社会保険労務士のみなさんとの交流が始まりました。患者さんへのアドバイスや具体的な手続きなど、対応は実に的確で、やはり専門職の協力が必要だと痛感しました。その後、「障害年金サポート社労士の会」(以下、社労士の会)として、無料相談会を定期的に開催されるなど、今日まで自主的に取り組みを続けてこられたことにも、大変感謝しています。

障害年金を取り巻く課題

2000年代半ば頃から、いわゆる年金問題が起こり、年金への関心が高まってきました。しかし、障害年金についてはまだ十分に周知されていないと思います。年金は社会保険のひとつですが、障害年金は福祉制度的な要素があり、手続きも複雑です。また障害年金という名称ゆえに、難病などの疾病も支給対象になることが、理解されにくい面もあります。医療者の理解が不十分であったり、医療者とケースワーカーの連携ができていない施設も見受けられます。こういった背景には、医療の現場や医療教育において、「医療と社会福祉の連動」という視点が抜け落ちていることがあるのではと感じています。

ですから、現状では障害年金について社労士の会のようなサポートが必要です。このような動きが拡がり、相談事業などに取り組む団体と社会保険労務士の連携を通して障害年金への理解を深め、全国の患者さんの生活向上に役立つことを願っています。そして、障害者総合福祉法制定に向けた取り組みの中で、障害年金に関する課題についても改善を訴えていきたいと思います。

障害年金とは
病気やけが等による障がいで、不自由な生活を余儀なくされた時に請求できる公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金)。受給資格のある全国民に給付される障害基礎年金と、被用者であった期間の報酬に比例して給付される障害厚生年金・障害共済年金がある。受給するには、年金法に定める障害等級1級、2級、3級等の状態にあること、初診日まで一定期間の保険料納付があることなどの要件を満たしていることが必要。肝硬変や肺気腫、糖尿病、がんや難病(特定疾患)などの疾病、精神疾患も、要件を満たしている場合には支給対象となる。
特別障害給付金制度
学生や主婦などで国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない難病患者や障がい者に対し、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情を考慮して創設された福祉的措置制度。

社会保険労務士の視点 医療や福祉に、社会保険労務士としての役割を活かしたい

障害年金サポート社労士の会 代表 加福 保子 さん
会員 河合 泰信 さん
小松 勢津子 さん

「社労士の会」結成の経緯や活動について教えてください

加福さん 私は、父がALS患者であったことから、日本ALS協会や北海道難病連とかかわりがありました。2005年に伊藤さんから協力の依頼を受けた後も、継続して障害年金に関する活動の必要性を感じたので、社会保険労務士仲間に声をかけ、「障害年金サポート社労士の会」を結成しました。 無料相談会を開催する中で、障害年金制度を知らずにいた相談者は内部疾患や精神疾患、難病の患者さんに多いこと、窓口では納得のいく説明が少ないと感じている相談者がいたこと、請求可能であるのに窓口で必要書類をもらえず、困った経験をした相談者もいたことなどが、わかりました。その後、無料相談会開催のほかに、患者団体などの医療講演会や相談会、市民講座に相談員や講師として参加しています。また個人で、業務として障害年金の手続き代行も行っています。

障害年金に関して、具体的にどのような問題があるのでしょうか

河合さん 請求には、初診日にいずれかの公的年金制度に加入していること、保険料を一定の期間納めていること、障害認定日に障害等級に該当する程度の障害の状態にあること、の3要件を満たすことが必要ですが、難病の場合は病歴が複雑で、確定診断に時間を要する場合が多く、初診日の確定が難しいのです。 小松さん 障害の程度を認定するために、診断書を請求する際の問題もあります。病院窓口で「医師が異動した」「医師が忙しいから頼みにくい」などの理由で速やかに診断書が発行されないケースもあり、また患者さんの方で遠慮してしまうこともあります。 加福さん 診断書は障害年金の審査の決め手となるので重要ですが、診断書をめぐって医師と患者さんの関係が悪くなると困りますし、認定基準はあっても実際に認定の判断が難しい場合もあります。医師の負担も減らすためにも、障害者手帳と障害年金の認定を連動させるなど、制度を改善する必要があると思います。 年金事務所等の相談窓口に社会保険労務士が担当する場合も増え、対応は改善されてきていると思います。札幌での無料相談で相談件数が減っている傾向なのも、窓口などで相談しやすくなってきたことが理由ではないかと考えています。 小松さん ただ、北海道でも地方に行くと相談する場がなく、障害年金を請求できず困っている患者さんは、いまだに多いのではないかと思います。そういった埋もれている声を拾い上げていくようなアプローチを考えていきたいですね。 加福さん 最近は障害年金に関心をもつ社会保険労務士も増え、旭川でも無料相談会を開催する社会保険労務士のグループが立ち上がりました。このようなグループがもっと各地にでき、ゆるやかに連携しながら北海道全体をカバーできれば、と期待しています。

難病連との連携や今後の活動について、どのように思われますか

河合さん 私は、難病連のみなさんと知り合い、社会保険労務士として活動していくうえでのよい刺激を受けることができました。障害年金は病気や障がいに苦しむ人の生活を支える重要なものですから、必要な人に支給されていくようにお手伝いしたいですし、その重要性を多くの人に知ってもらい、社会に広めていきたいですね。 加福さん 患者団体に所属する社会保険労務士を通じて情報を交換したり、そこから他の団体を紹介されたりと、患者団体や障がい者団体とのネットワークは拡がっています。今後は「社労士の会」として相談会などを通じて障害年金制度の周知を図り、埋もれた受給者の発掘などの支援を継続するとともに、将来的には、医療・福祉従事者の教育への参画や、医療や福祉の現場で社会保険労務士の役割を活かすソーシャルビジネスの可能性を模索していきたいと考えています。

障害年金サポート社労士の会
http://f.a-syarou.com/ksaport/
■設 立:2005年
■代 表:加福保子さん
■会 員:河合泰信さん、小松勢津子さん、熊谷たか子さん
■活 動:
  ●無料相談会を難病センター(札幌市)で年3回、ほかに釧路市や枝幸町などでも開催
  ●リウマチ友の会医療講演会や若年性認知症相談会などに参加
  ●『障害年金無料相談会のまとめと相談事例』発行(2009年)
  ●全国難病センター研究会において研究発表(2010年)
  ●障害年金の相談窓口をホームページに設置

取材を終えて〜まねきねこの視点

障害年金は、制度の複雑さなどから十分に活用されているとは言い難い現状にあり、年金制度の専門家の立場から社会保険労務士が果たす役割は、非常に大きいと考えられます。「障害年金サポート社労士の会」の活動にみるように、ヘルスケア関連団体と社会保険労務士が連携して、病気や障がいに苦しむ人たちを社会保険労務士につないでいくことが必要です。現在、社会保険労務士による全国的なサポート組織として、「NPO法人 障害年金支援ネットワーク」も活躍中。活動の拡がりが期待されます。