<ピアサポートNOW>

第1回
全国どこでもピアサポートが受けられる環境を目指してピアマネジャー養成に取り組む

社団法人 全国脊髄損傷者連合会
専務理事 千葉 均 さん

第1回は、ピアマネジャー養成研修事業を手がけるなど、独自のピアサポート活動を展開する(社)全国脊髄損傷者連合会専務理事の千葉均さんにお話を伺いました。

同じ課題や環境に直面する人たちがお互い対等な立場で支え合うピアサポートは、病気や障がいの当事者が集い、エンパワメントする場であるヘルスケア関連団体が担う役割として期待されています。しかし、医療や福祉の専門家による研究は進められていますが、実際にピアサポートに携わる側からその現状や課題が語られることはあまりありませんでした。
そこで、『まねきねこ』では新連載として、実際にピアサポートを行っている団体のリーダーやピアサポーターのお話を聞き、その取り組みや課題をご紹介していきたいと考えています
ピアサポート活動に取り組むことになった理由や背景を教えてください

脊髄損傷者に対する社会の受け入れ体制が十分でなかった頃は、3年から5年程度の長期入院が一般的で、患者同士でピアサポートのような支え合いが行われていましたが、最近はリハビリテーションの進歩や医療制度の改正により入院期間は次第に短くなりました。患者さんは3ヶ月から6ヶ月程度と短い入院期間で、精神面や情報面での十分な準備が得られないままに、社会への復帰が求められています。そのような状況だからこそ、ピアサポートが必要だと私たちは考えました。

また社会では、交通事故や労災事故による脊髄損傷が減る一方、スポーツ事故や、高齢者の転倒による脊髄損傷が増えています。特に情報が得にくい高齢の患者さんを支援したい、さらに継続的な支援が行えるように団体に入会してほしいという思いもあり、ピアサポートへの取り組みを始めました。

ピアマネジャーという考え方は、どこから生まれたのですか

私たちは、相談支援活動研究会を立ち上げ、必要な基礎的知識の習得と全国への普及を目的として各地で研修会を実施しました。その結果、さまざまな福祉制度や社会資源の活用を必要とする脊髄損傷者のピアサポートを行うためには、ケアマネジャーの手法を組み合わせることが有効と判断し、ピアマネジャー養成という考え方を導入しました。

その後、専門医やソーシャルワーカーなどの協力を得て準備・評価委員会を設立し、医学的な基礎知識、ピアマネジャーの役割、相談技術、社会資源の活用などを盛り込んだ『ピアマネジャー養成研修テキスト』を作成しました。そして、執筆者を講師に研修会を各地で開催して168名のピアマネジャーを養成しました。

ピアマネジャーは、実際にどのように活動を行っているのですか

現在、全国15支部でピアサポートのモデル事業に取り組んでいます。その中でも、ピアマネジャーの役割が確立しているのが千葉リハビリテーションセンターでの活動で、センターのスタッフと連携して複数の患者さんを対象としたグループサポートを定期的に実施しています。ピアサポートは、住宅改造、福祉制度、車の運転、外出支援などのカテゴリー別に行い、また、細かい生活面などの個別相談にも対応しており、患者さんや家族のニーズは高いようです。埼玉県総合リハビリテーションセンターなどでも同様のピアサポートを実施しています。

ピアマネジャーが活動するにあたっては、どのような問題がありますか

最も難しい問題は、ピアサポートに理解があり、積極的に受け入れてくれる医療施設が数少ないことです。個人情報保護の観点から患者さんの情報が把握しにくい、リハビリテーションなどで患者さんがとても忙しく、ピアサポートの時間が確保しにくいなどの問題もあります。各施設には、相談しやすいように専用スペースの設置を要望していますが、なかなか実現しません。

また、会員の高齢化などによって積極的に取り組めない支部もあり、全国で均等に進めていくのはかなり難しいと感じています。

今後は、どのように展開していくのですか

医療施設での活動にはさまざまな制約が伴うので、独自に相談会を開催するなど、地域での活動の場を広げたいと考えています。すでに公共施設などで相談会を実施している支部もあります。より効果的にピアサポートが行えるように、カテゴリー別のガイドブックの作成も計画しています。

最終的には、国などの公的な援助を受けて、全国どこの病院でも、またどの地域でもピアサポートが受けられる環境を作ることが私たちの願いです。そのために、ピアサポート活動が医療・福祉関係者に理解され、社会的に認知されるように、実績を積み重ね、信頼性を高めていきたいと考えています。

これから、ピアサポートへの取り組みを考えている団体へのメッセージはありますか

医療施設でのピアサポートの場合、施設のスタッフとのコミュニケーションを密に行い、お互いに理解を深め、信頼関係を育むことが重要です。

そして、ピアサポートが成功するかどうかの最終的な決め手は人材だと思います。ピアマネジャーが自分の経験や考えを相手に押しつけないように、必要な知識を体系的に学び、また患者団体としてピアサポートへの意識を高める研修を行い、活動を担える人材を育てることが重要だと思います。

ピアサポートについては、私たちと難病などの団体が共有できる部分もあるので、お互いに情報交換などを行い、ぜひ連携していきたいと思います。

千葉さんが語るピアサポートのポイント

●必要な知識を体系的に学ぶ
●心構えや姿勢を学び、意識を高める
●必要とされるピアサポートを見極める
●医療や福祉関係者への理解を深め、信頼関係を育む
●医療施設以外での、地域での活動にも取り組む 

全国脊髄損傷者連合会ピアサポートへの取り組み経緯
1959年 全国脊髄損傷者連合会発足
1995年 相談支援活動研究会を立ち上げる
1997年〜 全国8ヶ所において相談支援活動研修会を開催し、50人のピアサポーターが誕生。各支部にピアサポート担当職を設置
2004年 独立行政法人福祉医療機構の助成により、ピアマネジャー養成事業開始
『ピアマネジャー養成研修テキスト』発刊
2005年 東京・秋田・大阪でピアマネジャー養成研修会開催
2006年 岡山・鹿児島でピアマネジャー養成研修会開催
『ピアマネジャー養成研修テキスト』改訂
2008年〜 社団法人 日本損害保険協会の助成によりピアサポートのモデル事業に取り組む
2008年 独立行政法人 福祉医療機構の助成による「脊髄損傷者の社会参加促進啓発ビデオ制作事業」の実施
DVD『TOMORROW』〜新たな扉の向こうへ〜の無料配布