<知恵の泉>

HOW TO/第16回
小児がん治療中の子どもと家族のための夢の病院 チャイルド・ケモ・ハウス設立を目指して

NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス 事務局次長 萩原雅美

「チャイルド・ケモ・ハウス」は、小児がん治療中の子どもたちと、その家族のQOL(生活の質)に配慮した、日本で初めての小児がん専門施設の設立を目指すNPO法人です。設立・運営を一般市民や企業からの寄付でまかない、人材育成に取り組む活動の状況とノウハウをお伺いしました。

小児がん治療に関わる医師により研究会として発足

チャイルド・ケモ・ハウスの「ケモ」の由来は、「ケモ・セラピー=化学療法」という言葉です。わずか2坪という空間にベッド、おもちゃや生活用品、付き添う親のための簡易ベッドが入れられ、隣と隔てるのは一枚のカーテン。狭い病室で子どもたちは半年以上にわたって化学療法を受けながら病気と闘い、遊び、学び、心身ともに成長していかなければならない…。それが、小児がんの子どもたちと家族が置かれている現状です。

チャイルド・ケモ・ハウスは2005年、大阪大学医学部付属病院の小児科医師、楠木重範さんが、そんな環境を改善するための研究会を発足したのが始まりです。メンバーは医療関係者や同病院に入院していた患児の親。子どもと家族にとって本当に必要な施設とはなにかについて議論を重ね、入院経験のある患児や親たちの意見も取り入れる中で、「夢の病院は家」という構想が導き出されました。24時間家族が滞在できる部屋と病室がドッキングしたような病棟。子どもの発達と化学療法をしていく中で特有の心身の状態をサポートする専門的な人材も配置し、ケアを展開していく。そんな「夢の病院」プロジェクトが動き出しました。病院としての既存の補助制度を受けようとするとさまざまな制約があり、求めているアメニティやケアは得られません。そこで、建設費用や運営費を一般市民や企業の寄付によって調達することになりました。

助成金制度を活用し事業の主旨や活動をアピール

事務局次長の萩原雅美さんは、次女の白血病闘病の経験を経て、発足当時から活動に参加しています。

「理事の一人が、非営利組織のマネジメントや企業の社会的責任活動の支援をする会社の代表ということもあり、そのアドバイスで2006年にNPO法人格を取得しました。研究事業や、病院にCLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)というアメリカの資格を取得した人材を派遣する事業などに対して、初年度から日本財団などの助成金制度を継続して活用しています。研究会の報告書を作成するなど、私たちがなにをしたいのか、なにをしているのかを対外的に示すツールの作成にも助成金が生きています。寄付をしていただくためには、やはり実績や信頼が大前提です。ホームページやブログも立ち上げ、新聞やテレビのメディアにも多数取り上げられるようになり、チャイルド・ケモ・ハウスの認知度が高まっていきました。そんな中で、一般の方から具体的にどんな支援ができるのかという問い合わせが寄せられるようになりました。ちょうど積水ハウスマッチングプログラムの助成を受け〈こども・家族・医療者のホンネ〉という、ブログ記事からのセレクション冊子を制作していたので、その巻末に支援方法を明記しました」。

クレジット決済など寄付のしやすいシステムを採用

アメリカでは数十年も前に小児がんの専門病院が寄付で設立され、運営も寄付で成り立っています。イギリスでも同じ手法で世界初の小児ホスピスが誕生しています。そんな海外の事例に触れるたびに、日本の寄付文化の未熟さという壁を感じると萩原さん。余程のことがないと寄付というアクションにつながらない。そのためにも、いかに寄付しやすい形を探っていくかが大切だと語ります。

その手法として、日本財団からの提案を受け、ホームページからクレジット決済で寄付ができるシステムを採用。さらに同財団が展開する寄付プロジェクト「夢の貯金箱」にも参加しています。これは所定の飲料自動販売機の設置先を募り、それを設置することで売り上げから1本当たり10円分がチャイルド・ケモ・ハウスに寄付されるというものです。また、昨年は2件のチャリティコンサートのチャリティ先に選ばれています。

「企業に支援のお願いに行くときも、これをしてくださいではなく、どういう支援が可能ですかということを話しあいます。ある高級服地メーカーでは、チャイルド・ケモ・ハウスの趣旨と売り上げの一部を寄付することを明記した独自のプレートを作成していただき、200店舗のテーラーに設置してくれています」。

理念・基本指針を明文化した「クレド」を作成

寄付集めや助成金申請、メディアへの露出にしても、基盤となる団体のコンセプト作りがいかに重要かを痛感していると萩原さん。そのために昨年度は、チャイルド・ケモ・ハウスの理念や基本指針を明文化した、〈クレド〉を作成しました。これは夢の病院に関わるすべてのスタッフやボランティアらが共通して持ちあわせておくべきものです。また、単なる「理想とするもの」ではなく、一人ひとりが行動するときやミスをおかしたときに、このクレドに照らし合わせて行動を振り返ることができるという、リスクマネジメントの手法でもあります。クレドは常に見直し、ブラッシュアップを図っていくそうです。

日本初の施設としてよりよいモデル事業となることが目標

チャイルド・ケモ・ハウスの建設予定地は大阪府北部に宅地造成された国際文化公園都市「彩都(さいと)」にあり、現在、交渉が進んでいます。当初の計画では30床の病院でしたが、総合病院が多い地域特性もあり、ベッド数が飽和状態で新しく「病院」がつくれないことがわかりました。そこで19床の「有床診療所」に方向転換。建物の模型も完成しつつあり、2011年の開業に向かって準備が進んでいます。

「大口の寄付をいただくためには、やはり土地が決まり建物の模型を見せるなど、具体的なプランを示さなければなりません。現在は、そのための詰めの段階に入っているところです。寄付をお願いする企業や団体もほぼ決まりました。とにかく前例のない日本初の施設なので、建物のハード面も、治療のソフト面でも、よりよいモデルとなることを目指しています。ただ、チャイルド・ケモ・ハウス事業は小児がんの子どもの現場だけがよくなるのではなく、社会全体がよい仕組みになっていくよう、公共性のある事業でありたいと思っています。そのためにも、私たちが研究してきたことや資金調達の手法など、今後もできるだけオープンにしていこうと話しあっています」。 さまざまなハードルを乗り越えながら、夢の病院は一歩一歩、実現へと近づいています。

*チャイルド・ケモ・ハウスの支援方法

21.ご寄付を随時受け付けています
2.季節ごとに寄付の特別企画を開催いたします
3.会員を募集しています
4.『夢の自動販売機』プロジェクトにご参加ください
5.リボンマグネットをご購入いただけます
6.イベントにご参加・ご協力ください