<社会学からみたピアサポート>

ますます重視され、研究が深まるピアサポートへの期待

VHO-netの北陸学習会や東京でのワークショップにも参加されている富山大学の伊藤智樹先生が昨年『ピア・サポートの社会学』という本を出版(編著)されました。その中では事例紹介を通して、ピアサポートとはどういうものなのか、また、そのより良い活動へのヒントが説明されています。まねきねこでは次号より、伊藤先生の研究成果から見えてきたピアサポートに関する連載がスタートします。連載開始を前にお話を伺いました。

事例を通して、わかりやすく伝える

ピアサポートについてはVHO-netでも2013年にプロジェクトチームを立ち上げ、ワークショップや地域学習会のテーマとして取り上げています。また、まねきねこでも「ピアサポートNOW」のコーナーで各患者団体の取り組みを伝えてきました。昨今は患者団体の活動だけでなく、医療や行政の中でもピアサポート活動への認識の高まりを感じますが、伊藤先生がこの本を出版するに至った背景を教えてください。

2008年から3年間、厚生労働科学研究費補助金対象の難病関連研究班に携わりました。研究班では難病医療の中で今後、ピアサポートがさらに重視されていくだろうという認識がありました。ところがピアサポートとはこういうものという共通認識が何となくあるものの、あくまでも経験を通じて得た“経験則”で、それを越えたものがないように感じました。また、測定指標をつくって数値が高ければピアサポートの効果があったとする、そういう発想の研究が目立ちました。私は結果だけではなく、プロセスの部分で何が起こっているかが重要で、そこを伝えることに意味があると思い、この本の出版に取り組みました。ピアサポート研究はまだまだ層は薄いのですが、これから需要が高まることで深まっていくと思います。

<この本の中では難病、認知症などの当事者や家族の事例が紹介され、それらを整理・分析し、その中からピアサポートの定義やピアサポートとセルフヘルプグループ(自助グループ)の関係性などが述べられていますね。執筆にあたって心がけた点を教えてください。

5人の社会学者が執筆に携わっていますが、いわゆる社会学の内部の人たちだけでなく、医療・福祉職、患者団体の方々にも、できるだけわかりやすく読んでいただけるような内容を目指しました。

ピアサポートの原点にこだわる

ピアサポートを考える時に、患者自身が自分の体験を話す、またそれを聞く。その「病の語り」=「物語」という観点から得られるヒントがあると書かれていますね。

たとえば病歴が長く自分が苦しかった時の記憶が薄れている人が相談員で、新しく病気になった仲間が相談に来た場合、早く自分のいるステージに引っぱり上げたくなる。つまり一段高いところから何かを与えるという枠組みをつくってしまいがちです。そして対応したことへの手応えがほしくなる。そうではなく自分が同じ立場だった頃を思い出し、ありありと語れる気持ちを忘れない。その人間同士の心のやりとりができることこそが、ピアサポートの原点だと私は思っています。そのあたりも次号からの連載で、詳しく解説していけたらと思っています。

伊藤 智樹 氏 プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、富山大学人文学部人文学科社会文化コース(社会学)准教授。

■著 書

『ピア・サポートの社会学』(編著/晃洋書房 2013年)、『セルフヘルプ・グループの自己物語論』(ハーベスト社 2009年)、 『〈支援〉の社会学』(共編著/青弓社 2008年)

※伊藤先生の活動研究については『まねきねこ』 第23号「WAVE」でもご紹介しています。  ぜひご覧ください。
 まねきねこバックナンバーURL
http://www.vho-net.org/-category-223/